森井のコラム

2011年4月1日

震災後1ヶ月を経て

東日本大震災を経験し、約1ヶ月経過した中、様々な情報が集まってきました。

1.金融機関の不動産融資動向
 メガバンク:震災前と基本的変化なし
 地銀:震災関連棄損の大小で違いがある
 外資:震災直後担当者の流出があったが過半が復帰している
 ただし、投資判断については当面様子見の観測
 メザニンについては、原発復旧状況を注視し、マクロ的リスクに注目

2.投資家動向
 日系機関投資家:基本的に変化なし
 外資系投資家:ここ数年のポジション縮小傾向が継続、
 アジア圏でのポートフォリオバランスに注視
 震災後の投げ売り物件の取得意向あるも物件出ず

3.市場動向
 ア)ミクロ
  耐震性や液状化地域でのリスク顕在化により、急速に物件差別化が加速している
 イ)マクロ
  原発の広域的影響継続の長期化と、物資補給減に伴う経済縮小を懸念
 ウ)短期
  設備再生と電力不足のため生産復旧に当面時間を要することで一年単位では悪化
 エ)中長期
  日本の非常に優れた部品製造力を世界工業での圧倒的存在感を認識したことと、復興需要等の投資効果の顕在化により全般的経済の活性化が発生

4.不動産市場
東北方面への投資活動は停滞するも国内投資家の動きに大きな変化はなく、震災に伴う物理的棄損の修復も順調に進みつつあることで、耐震性に対する投資判断へのウエイトは高まるものの、新耐震を基本的投資対象としている投 資家にとって大きな変化はない。
 ただし、液状化に伴うインフラ棄損と復旧の長期化が発生している地域への見方は厳しくなる。

5.東西での機能分散等にかかわるテナント動向の変化
データバックアップ施設の配置エリアの広域化や、本社機能の部分分散などの動きは出るが、全体の市場環境を大きく変化させる要因には当面ならないと考える。
 しかし、国家政策として企業機能の分散化や、復興地域の抜本的土地機能の創造などが行われるならば影響を受けることになろうが、原発問題の拡大が無ければ企業機能の分散に対しては終息方向へ動くと推測する。

総括
千年や百年に一度と言われる震災リスクは、直面する場面では非常に大きな問題となるが長期的な投資スタンスからの分析では、発生確率は稀少で投資リスクとしてみればそれほど大きなものとは言えないばかりか、耐震性を有する物件に対しては当初より当該リスクを考慮した投資行動がなされている。
今回、震災直後で余震や誘発地震が続いている間は投資活動は控えめになる投資家も在ろうかと思うが、余震終息や科学的見地に基づきコンセンサスを得た原発の封じ込め対策のルートマップが出来上がれば、本格的な投資活動の再開がなされるものと考える。

評価の動向
1.首都圏の湾岸液状化地域
2.流通施設については、耐震建築物の被害は軽微で道路などのインフラ復旧もすでにほぼ終えており、投資への影響は軽微と考える。
3.オフィス地域においては、大きな棄損は発生しておらず影響は軽微と考えられる。
4.新浦安を主とした住宅地域については、下水を始めとした機能回復はまだ長期化し、完全復旧には数年かかるようで投資活動は減速または停止と考える。

感想
あれほどの大きな地震にあった東京を目の当たりにし、ごく一部で損壊はあったものの、都心のビルのガラスが割れるでもなく倒壊もなく、建築中の潮留のビルの火災はあったものの、発生時間の幸があったこともあり密集市街地での火災もなく、帰宅難民は出たことを除き地震直接の被害は東京ではほとんど無かったと言えよう。
恐るべき耐震都市を実感した。直下大地震が来ないことを祈るが、想像以上に耐震能力が高いことを認識できた。
原発については、経済成長にとって必要不可欠であった施設であるが故に本質から目をそらしてきたリスク管理について、これを機に施設リスクの再点検を行うことが再生への近道となろう。
ただ、むやみに耐震や、津波防波堤を作るようなことをせずに原発のような無限大の危険に対しては十分な対策を行うことが求められるが、何百年周期での大津波に対抗する防波堤は無意味で津波が来ても人命保持ができる用途規制等を含めた都市開発が寛容だと考える。
たとえば、東北の沿岸部などは、避難施設を準備することは必要だが、観光や漁業・工業など収益を生み出す用途を中心とし、津波で施設が浚われたとしても、短期で復旧できるものを中心に配置するような再開発を行うなどの考えが必要だ。言い換えれば、全く新しい街を作るような都市計画が求められる。