森井のコラム

2008年7月1日

国際財務報告基準IFRSへのコンバージェンス(国際的収斂)とCRE(企業不動産戦略) 

国際財務報告基準(IFRS、通称、国際会計基準)とは、世界的に利用されつつある国際会計基準審議会(IASB)によって設定される会計基準の総称です。

平成22年3月31日以後終了する事業年度から適用されようとしている会計基準では、賃貸等不動産(事業用不動産を除く更地等の遊休不動産を含む企業保有不動産)総額が総資産額に占める割合が低く重要性が低い場合(監査法人としてこの重要性の判断が難しい)を除き、これらの不動産の概要・変動・時価・評価方法・損益を毎期注記にて開示することが要請されようとしています。

平成22年3月31日以後終了する事業年度から適用となると、適用開始事業年度まで一年を切っており、今年度から準備を始めないと厳しい状況です。
これらの実施に当たっては、時価開示要請の要否を左右する資産の重要性の判断を行う上で、保有不動産の現状把握を避けることはできないでしょう。

元々、不動産取得(投資)を継続的に行ってきた企業では、既に保有不動産のデータベースはできていると考えられますが、その他の企業ではデータベースとして整理されていない場合が多く、また、以前作られていた場合でも古くなり、そのままでは使えないものも多いと思います。
新たな会計基準適用は、ほぼ避けて通れないばかりか、資産情報の開示が適切に行われない様なこととなれば企業ブランドの低下を招き、株価の下落などにも波及する恐れがあります。
企業資産の情報開示を適切に行うことで、企業ブランドの増幅へ繋げられるようにすることが肝要です。
これらをスムーズに行うためには、企業保有資産のデータベース構築から、資産リストによる概算時価把握・遊休不動産等の有効活用検討・鑑定評価などを中立的立場で守秘義務の下、評価物件情報を保全しながら行うことが必要でしょう。
これらの調査・評価・検証により、企業が保有している遊休不動産等の不動産戦略の検討・企業経営上IR戦略やその他の様々な資産戦略の立案実行のスピードが上がり、資産パフォーマンスが向上する効果が期待できます。
また、CRE戦略の進展により埋もれていた社有物件が日の目を見ることとなることになれば新たな企業収益を生み出すこととなるでしょう。
企業が保有する主要な賃貸等不動産について企業会計上、毎期の不動産価格の開示が求められることから、企業戦略上のみならず会計監査上からも以下のことに注意を要すると考えられます。

1. 資産価格の変動や下落が過度に起こるとこれが企業損益に反映され、本来の企業活動の成果と乖離してしまうため、論理的でかつ安定性を有する評価手法の確立が肝要。
2. 各企業独自の業態に対応した鑑定評価基準等に基づく評価方法を策定。
3. 毎期の価格変動報告を含めた事務を軽減するシステムのアウトソーシングまたは導入。
4. 企業の事業活動に対する寄与度を判定する為の保有不動産の適正評価と、オフバランス化による企業への影響を分析。
5. 保有不動産価格の将来動向と、不動産に対する将来的な企業戦略上のニーズとの検証。
今後、我々鑑定業界はスピーディーで且つ企業繁栄に寄与できる有用な評価業務が益々求められることでしょう。
これらの新たなニーズに応えて行かなければなりません。